もくじ
タイ人の平均月収:都市部と地方の違い

まず、タイ全体の平均月収ですが、タイ国家統計局などのデータを見ると、大体15,000〜20,000バーツ(約6万円〜8万円)あたりが一つの目安になります。(※1バーツ=4円で計算)
でも、これはあくまで国全体の平均値。タイで最も重要なポイントは、「住んでいる場所によって収入が全く違う」ということです。
バンコク首都圏: タイで最も経済が発展しているバンコク。平均月収は25,000〜30,000バーツ(約10万円〜12万円)もしくはそれ以上になることも珍しくありません。多くの企業や工場がここに集中しているので、仕事の機会も給与水準も高くなる傾向があります。
地方都市・農村部: 一方で、地方、特に農業が主な産業の東北部などでは、平均月収が10,000〜15,000バーツ(約4万円〜6万円)程度になることも。バンコクと比べると、2倍近い差があるのが現実です。そのため、多くの若者が仕事を求めてバンコクに出稼ぎに来ています。
このように、タイの収入を語る上で「都市部と地方の格差」は切っても切れない問題なんです。
タイの職業別月収:どんな仕事が稼げる?
日本と同じように、タイでも職業によって収入は大きく変わります。一般的に、専門知識やスキルが求められる仕事ほど給料が高い傾向にあります。
<月収が高い傾向にある職業>
- 医師・歯科医師: 専門性が高く、月収100,000バーツ(約40万円)を超えることも。
- ITエンジニア・プログラマー: 近年、デジタル化の波に乗って需要が高く、月収50,000〜100,000バーツ以上も可能です。
- 金融・保険業: 銀行や保険会社なども給与水準が高い業界です。
- 航空業界(パイロットなど): 高い専門スキルが求められ、高収入の代表格です。
<一般的な職業の月収目安>
- 一般企業の事務職(大卒): 18,000〜25,000バーツ(約7.2万円〜10万円)
- 工場のワーカー: 12,000〜20,000バーツ(約4.8万円〜8万円)
- ホテルのスタッフ: 15,000〜25,000バーツ(約6万円〜10万円)+サービスチャージ
- 農業従事者: 収入は季節や作物の出来高に左右され、月収10,000バーツ(約4万円)を下回ることもあります。
やはり、専門性を身につけることが高収入への近道と言えそうですね。
タイ人の月収でどんな生活ができる?物価との関係
「月収8万円って、タイで暮らすのは大変じゃない?」と思うかもしれませんが、大切なのは物価とのバランスです。タイは日本に比べて物価が安いので、月収の金額だけで生活レベルは判断できません。
屋台の食事: 1食40〜70バーツ(約160円〜280円)
ローカルな食堂: 1食100バーツ前後(約400円)
バンコクの公共交通機関(BTS/MRT): 初乗り17バーツ〜(約68円〜)
アパートの家賃(バンコク郊外): 月4,000〜8,000バーツ(約2万円〜3.2万円)
※2025年8月時点の目安
例えば、月収20,000バーツ(約8万円)の人の場合、家賃に6,000バーツ、食費に8,000バーツ、交通費や雑費に4,000バーツ…といった形で、節約を意識すれば十分に生活できます。ただ、ショッピングモールでの買い物や日本食レストランでの食事、旅行などを楽しむには、もう少し余裕が欲しいというのが本音です。
月収50,000バーツ(約20万円)あれば快適な生活が送れ、多少自己投資や貯金にもお金を回せるようになります。
タイ人サラリーマンの給料事情:ボーナスや福利厚生は?
タイの会社員(サラリーマン)の楽しみといえば、やっぱりボーナスです!
法律で義務付けられているわけではありませんが、多くの企業、特に日系や欧米系の企業ではボーナス制度があります。支給額は業績によって変動しますが、一般的には年に1回、給料の1〜3ヶ月分が支給されることが多いです。業績が良い大手企業だと、5ヶ月分以上のボーナスが出ることもあり、年末の大きな楽しみになっています。
福利厚生については、社会保険(健康保険や年金)への加入は義務です。それ以外に、会社独自の福利厚生として、
- 民間医療保険の提供
- 退職金積立制度(プロビデントファンド)
- 健康診断
- 交通費の補助
などがあります。
今後の展望と昇給の可能性:給料は上がっていく?
「タイの給料って、これから上がっていくの?」という点も気になりますよね。結論から言うと、長期的には上昇傾向にあると、多くのタイ人が感じています。
その理由はいくつかあります。
経済成長と産業の高度化: タイ政府は今、EV(電気自動車)産業やデジタル経済、高度医療といった新しい産業に力を入れています。こうした分野が育てば、より専門性が高く、給料の良い仕事が増えていくと期待されています。
最低賃金の上昇: 政府は定期的に最低賃金の見直しを行っており、少しずつですが引き上げていく方針です。これが国全体の給与水準を底上げする効果があります。
スキルを持つ人材の価値向上: 昔と違って、今は終身雇用という考え方は薄れています。特に若い世代は、より良い条件を求めて転職することに積極的です。英語や日本語、中国語などの語学スキルや、ITなどの専門スキルを持つ人材は、企業間で取り合いになり、給料も上がりやすいです。
収入を増やすためのタイ人の工夫:副業と投資が当たり前?
実は、多くのタイ人にとって、会社の給料は「収入源の一つ」に過ぎなかったりします。特にバンコクの若い世代の間では、収入を増やすために副業(アーチープ・スーム)をしたり、投資をしたりするのが、ごく当たり前の感覚になっています。
<タイで人気の副業>
オンラインでの物販: FacebookやInstagram、TikTokといったSNSを使って、洋服や化粧品、手作りのお菓子などを販売するのは定番中の定番です。ライブコマースで商品を売る人もたくさんいます!
デリバリーサービスのドライバー: GrabやLINE MANといったアプリを使って、空いた時間に食べ物や荷物を配達する仕事も人気です。
週末だけの屋台やカフェ: 料理が得意な人が、週末だけ自宅の前や市場で小さな屋台を開くことも珍しくありません。
<投資への関心>
少し前までは「投資はお金持ちがやること」というイメージでしたが、今はスマホアプリで手軽にタイの株式や投資信託が買えるようになり、若いサラリーマンも積極的に資産運用を始めています。インフレから自分のお金を守り、将来のために資産を築きたいという意識が高まっているんです。
このように、一つの会社に頼るだけでなく、自分の力で収入の柱を増やそうとするハングリー精神が、今のタイ人の特徴かもしれません。
公式データには現れない「インフォーマルセクター」の収入

最後にもう一つ、タイの収入を語る上で欠かせないのが、公式な統計にはハッキリと現れてこない「インフォーマルセクター」で働く人々の存在です。
インフォーマルセクターとは、例えばこんな人たちのことです。
街角の屋台の店主
市場で野菜や果物を売っている人
バイクタクシーの運転手
フリーランスのデザイナーや翻訳家
彼らは会社に雇われているわけではないので、固定給や社会保険はありません。しかし、実は会社員の平均月収よりもずっと多く稼いでいるケースが少なくないんです。
例えば、観光地の人気屋台の店主なら、1日に数千バーツを売り上げることもありますし、腕の良いバイクタクシー運転手も、月収30,000バーツ(約12万円)以上稼ぐと言われています。
不安定というデメリットはありますが、自分の頑張り次第で収入を大きく伸ばせるのがこの世界の魅力。街の活気は、こうしたパワフルな人々によって支えられている部分も大きいんですよ。だから、タイの平均月収データだけ見ると実態を見誤ってしまう可能性がある、ということは知っておいてほしいポイントです。
タイの最低賃金と月収の現実:格差の実態
タイには国が定めた最低賃金があります。2025年時点での1日あたりの最低賃金は、県によって少し異なりますが、約330〜370バーツ(約1,320円〜1,480円)です。これを月収に換算すると、大体9,900〜11,100バーツ(約3.9万円〜4.4万円)ほどになります。
この最低賃金に近い収入で暮らしている人々が、特に地方にはまだたくさんいます。一方で、バンコクでは富裕層が高級車を乗り回し、高級ブランド品を買い物を楽しんでいます。この「貧富の差」の大きさが、タイ社会の大きな課題の一つです。
クレディ・スイスの2018年の報告書によると、タイの上位1%の富裕層が国全体の富の約67%を保有しているというデータもあり、この格差がいかに大きいかがわかります。
タイ人の月収は日本とどう違う?比較でわかる収入事情
日本の平均月収と比べると、タイの平均月収は金額の上ではかなり低く見えます。日本の平均給与が月収で30万円以上だと聞くと、タイ人の私たちからすると「すごい!」の一言です。
しかし、先ほどお話ししたように、物価が大きく異なります。例えば、日本では1,000円かかるランチも、タイなら300円程度で済ませることができます。そのため、単純に月収の金額だけで豊かさを比べることはできません。
ただ、車や最新のスマートフォン、ブランド品といった世界共通の価格を持つものを買う場合、タイ人の収入では負担が大きくなるのは事実です。多くの人が、ローンを組んで車や家を購入しています。
バンコクの月収:高収入の可能性と現実
「タイで稼ぐならバンコク」と言われるように、バンコクには高収入を得るチャンスがたくさんあります。特に、外資系企業やIT関連企業では、能力次第で若くして月収100,000バーツ(約40万円)以上を稼ぐ人もいます。
しかしその分、バンコクは家賃や生活費もタイで最も高いエリアです。また、競争も激しく、誰もが高収入を得られるわけではありません。夢を抱いて地方から出てきたものの、厳しい現実に直面する若者も少なくないのです。
タイの若者の月収:新卒や20代の給料は?
大学を卒業したばかりの新卒者の月収は、学歴や専攻によって変わりますが、一般的には15,000〜25,000バーツ(約6万円〜10万円)からスタートすることが多いです。
ここから経験を積み、スキルを身につけていくことで、20代後半には30,000〜40,000バーツ(約12万円〜16万円)を目指していくのが一般的なキャリアパスです。もちろん、これはあくまで平均的な話で、もっと早く昇給していく人もたくさんいますよ。
タイで働く外国人との月収比較
タイには、多くの外国人が働いていますが、特に日本人を含む先進国出身者の給料は、タイ人の平均月収よりもかなり高く設定されています。
これは、外国人を雇用する場合、タイの法律で最低給与額が国籍ごとに定められているためです。例えば、日本人の場合は月収50,000バーツ(約20万円)以上が基準となっています。これは、タイ人の大卒初任給の2〜3倍にあたります。
専門的な知識や管理職としての経験を持つ外国人材は、タイの経済発展にとって重要な存在と考えられているため、給与も優遇されているんですね。
日本人がタイで快適に暮らすにはいくら必要?

これは、SNSでよく炎上している話題ですね。「日本円で月30万円くらいあれば王様みたいな生活ができるんでしょう?」なんて言われることもありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
結論から言うと、生活レベルによりますが、月々にかかる費用は大きく変わります。
ここではバンコク都心〜近郊に住む単身者を想定して、3つのライフスタイル別に具体的な月間生活費をシミュレーションしてみました。(1バーツ=4円で計算)
① 節約派:タイのローカル生活を満喫するスタイル(月30,000~50,000バーツ / 約12万~20万円)
「とにかくコストを抑えて、タイの文化にどっぷり浸かりたい!」という方向けのスタイルです。
- 住居費(10,000~15,000バーツ):BTS(電車)の駅から少し離れたエリアや、築年数の経ったコンドミニアム(プールやジムなし)を選びます。
- 食費(8,000~12,000バーツ):食事は屋台やローカル食堂が中心。自炊も積極的に行い、スーパーはローカル向けの市場やBigCなどを活用します。
- 交通費(2,000~3,000バーツ):移動はBTSやバスがメイン。近距離はバイクタクシーを使い、タクシーは極力避けます。
- その他費用(10,000~20,000バーツ):通信費、光熱費、日用品、たまの娯楽費など。
この生活スタイルは可能ですが、暑い中エアコンのない部屋で過ごす時間が長かったり、食事の選択肢が限られたりするため、日本人にとっては慣れるまで少し大変かもしれません。
② 快適派:日本と変わらない安心感で暮らすスタイル(月60,000~90,000バーツ / 約24万~36万円)
日本と同程度か、やや豊かな暮らしをしている多くの日本人駐在員や現地採用の方が、このくらいの予算感で生活しているイメージです。ストレスなく、タイの良いところを存分に楽しめるバランスの取れたスタイルです。
- 住居費(20,000~35,000バーツ):スクンビットエリアのオンヌット駅〜エカマイ駅周辺など、日本人も多く住むエリアで、プール・ジム付きの比較的新しいコンドミニアム(1ベッドルーム)に住めます。
- 食費(15,000~25,000バーツ):普段は自炊やローカルフードを楽しみつつ、週に数回は日本食レストランやおしゃれなカフェでの外食も満喫できます。フジスーパーなどで日本の食材も気軽に買えます。
- 交通費(3,000~5,000バーツ):BTSやMRTを基本に、暑い日や荷物が多い時はためらわずにGrab(配車アプリ)やタクシーを利用します。
- その他費用(22,000~25,000バーツ):通信・光熱費、交際費、ショッピング、週末の小旅行、マッサージ(月数回)など、プライベートも十分に楽しむことができます。
個人的には、日本人の方がバンコクで「快適だ」と感じながら暮らすには、この月70,000バーツ(約28万円)前後が一つの目安になると思います。
③ 満喫派:仕事もプライベートも妥協しないラグジュアリースタイル(月100,000バーツ~ / 約40万円~)
生活の質に一切妥協したくない方向け。高級サービスアパートに住み、移動はほぼタクシー、食事は有名レストランで、というような贅沢な暮らしです。
- 住居費(40,000バーツ~):プロンポンやトンローといった都心一等地の高級コンドミニアムや、掃除・リネン交換サービス付きのサービスアパートに住めます。
- 食費(30,000バーツ~):高級日本食レストランやホテルのダイニング、輸入食材をふんだんに使った自炊など、食に一切の妥協はありません。
- 交通費(10,000バーツ~):どこへ行くにもGrabやタクシー。自分で車を所有することも考えられます(タイは車が高いですが…)。
- その他費用(20,000バーツ~):ゴルフ、高級スパ、海外旅行、ブランド品のショッピングなど、趣味や娯楽に好きなだけお金を使えます。
見落としがちな注意点
月々の生活費以外にも、日本人がタイで暮らす上で考えておくべき費用や注意点があります。
医療費:タイの私立病院は医療レベルが高いですが、その分治療費は非常に高額です。風邪で診察してもらうだけで5,000バーツを超えることも。万が一の入院や手術に備え、民間の医療保険への加入は必須と考えた方が良いでしょう。
ビザ費用:タイに長期滞在するには、就労ビザ(Non-B)やリタイアメントビザなど、目的に合ったビザが必要です。これらの取得・更新には費用と手間がかかります。
為替レートの変動:日本円で収入を得てタイで暮らす場合、円安が進むとバーツ建ての生活費が実質的に値上がりしてしまいます。最近の円安は、タイで暮らす日本人にとっても大きな関心事です。
タイ人の月収はいくら?最新データでわかる平均収入と生活実態 まとめ
タイは物価が安いイメージがあると思いますが、日本と同じような快適さや安心感を求めると、それなりにコストがかかるのが現実です。
SNSでたまに流れてくる月5万円あればタイで豊かに暮らせるなんてのは、タイ語が話せてバンコクから2~3時間離れた郊外でならまだ方法がありますが、それも病気をしたりすると一発で詰みます。
しかし、同じ金額で日本よりも広い家に住めたり、気軽にマッサージや外食やデリバリーを楽しめるのは事実。タイへ移住したい人は今後も増えてくるかと思います。
平均月収は日本と比べると低いですが、物価とのバランスを取りながら、多くのタイ人は日々の生活を楽しんでいます。もちろん、格差の問題など課題もありますが、経済成長とともに私たちの給料も少しずつ上がってきています。
もしタイに来る機会があれば、ぜひ屋台で美味しいタイ料理を食べながら、タイの活気ある経済を肌で感じてみてくださいね!